カテゴリー:「市民協働と防災」テーマ館以外の企画レポート

【5日目・レポート】防災強化に市民の参画不可欠

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 5日間に渡った国連防災世界会議を総括する総合フォーラム「復興と防災を支える市民のちから」が18日、仙台市青葉区の東北大川内萩ホールであった。仙台国際センターで行われた本体会議と市内外の各所で展開されたパブリックフォーラムの議論の内容を全体で共有するのが狙い。東日本大震災の被災地である仙台市で会議が開催された意義と成果を振り返りながら、防災の視点を今後の行政や市民生活にどう生かしていくかが語り合われた。

 

 3部構成のフォーラムのうち、第2部は「復興と防災を支える市民のちから」と題したパネルディスカッション。「女性と防災」「市民協働と防災」の二つのテーマ館運営に携わったパネリスト4人が登壇した。

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 NPO法人「イコールネット仙台」代表理事の宗片恵美子(むなかた・えみこ)さんは、「女性と防災」のテーマ館で、従来取り組んできた男女共同参画の重要性を防災の視点から発信した。「被災者であると同時に支援者にもなった女性の力は大きい。もっと女性がものを言える環境が必要」と訴えた。

 せんだい男女参画財団理事長の木須八重子(きす・やえこ)さんは、同テーマ館で開かれた5つのシンポジウム登壇者34人のうち、17人が被災した女性だったことを紹介。「生の言葉」を伝える役割を果たせたことを強調した。

 みやぎ連携復興センターの石塚直樹(いしづか・なおき)さんは、「市民協働と防災」のテーマ館運営に携わった。「出展者と市民の間で成功事例だけではなく、失敗例も共有できた。学びの場として近い距離で対話できたのがよかった」と総括した。

 2015防災世界会議日本CSOネットワークの合田茂広(ごうだ・しげひろ)さんは、市民主導の10のセッションを展開。「パブリックフォーラムの参加者は4万人を見込んだが、15万人を超える勢いだ」と成果を力説した。

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「語り継ぐことは、日本のお家芸」という言葉が印象に残った。
思い出すのもつらい震災の記憶も、語り継ぎ、共有することで、
次代の人々に「備え」の大切さを訴える。

5日間の会議では多くの体験が語られた。
メッセージを受け取った一人ひとりが、社会の担い手として
次の行動を起こすことが求められていると感じた。

(記事担当)
山形大2年 三浦紗樹(みうら・さき)
山形大2年 鈴木里緒(すずき・りお)
茨城大3年 後藤結有(ごとう・ゆう)

 

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【5日目・レポート】観光で復興を後押し / Report on the 5th Day: Recovery Through Tourism

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観光の視点から、被災地の復興策を模索するパブリックフォーラム
「東北観光の課題と今後の方策」が18日、仙台市青葉区のAER(アエル)で行われた。
会議最終日の平日にも関わらず、約300人が聴講。
東北を元気にする斬新な意見が次々と示され、
多くの人が熱心にメモを取る姿が見られた。 

【東北観光の最前線に、約300名が集まった。】

【東北観光の最前線に、約300名が集まった。】 

 

東北地方だけでなく、全国で観光振興の助言などを行う
東北地域環境研究室代表の志賀秀一(しが・しゅういち)さんが基調講演した。

続くパネルディスカッションは、
「被災地の新たな魅力の発見とこれからの観光」をテーマに、
東北の観光業に携わる3人が討論。
宮城大教授の宮原育子(みやはら・いくこ)さんが進行役を務めた。

「被災地」としてくくられる東北を、どう「観光地」へと変えていくのか─。

旅行大手JTBの観光戦略部長の加藤誠(かとう・まこと)さんは、
「陸海空の交通手段を最大限活用し、より多くの旅行客を呼び込もう」と提案。
東北6県が連携して取り組む必要性を訴えた。

東北各地でバス事業や観光ホテルを運営する
「みちのりホールディングス」の代表松本順(まつもと・じゅん)さんは、
被災地学習の要素を盛り込んだ
企業向けの研修旅行の取り組み事例を紹介。
レジャーだけではない、「学びの場」としての被災地の価値を訴えた。

宮城県南三陸町の「ホテル観洋」の女将、阿部憲子(あべ・のりこ)さんは、
「震災を風化させない取り組みが必要」として、
被災地に外国人を招き入れる重要性を説いた。

【登壇者それぞれが復興への思いを語った】

【登壇者それぞれが復興への思いを語った】 

 

震災で大きな被害を受けても、
痛みをバネに再起の道を模索する観光の最前線。
自社や地元の復興だけでなく、東北全体の盛り上げを目指す志の高さに、
来場者の多くはエールの眼差しを送り続けた。

 

(記事担当)
東北大学4年 大高志織(おおたか・しおり)
東北学院大学3年 今一馬(こん・かずま)

 

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【5日目・レポート】ネットによる減災を考える

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インターネットを減災に役立てる方策を考えるシンポジウムが18日、
仙台市青葉区の仙台市民会館大ホールで開かれた。
テーマは、そのまま「コミュニティとインターネットによる減災の未来」。
気象予報会社「ウェザーニューズ」(千葉市)が主催した。

日本のネット社会をけん引してきた実業家・堀江貴文(ほりえ・たかぶみ)さん、
人気動画サービス「ニコニコ動画」を運営する
「ニワンゴ」社長の杉本誠司(すぎもと・せいじ)さん、
NHKネット報道部の山下和彦(やました・かずひこ)さんら5人が登壇。
ネットの防災に関するそれぞれの自論を披露した。

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ネットに関するシンポらしく、会場の様子は「ニコニコ動画」や「Youtube」で生中継された。視聴者は常時8000人前後を数え、サイトには感想など多くのコメントが寄せられた。

 

東日本大震災では、携帯電話やスマートホンで気軽に投稿・閲覧ができる
Twitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)といった
SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)が、
災害の実情や避難所の場所など、多くの情報発信と受信を可能にした。

最大の特徴は、情報の発信源が個人の投稿が主流で、
旧来情報を独善してきたテレビや新聞が把握しきれない情報も行き交った。

山下さんは「新聞・テレビなどの公共のメディアよりも、
いまやSNSが人々の日常に密接している。
SNSを介したネットワークを、防災に役立てる必要性を感じている」と語った。

一般のネットユーザーの投稿が力を発揮した例としては
2014年12月、大雪の影響でJR仙山線の列車が
宮城─山形県境の山中で立ち往生した事案を挙げた。

多くの乗客が8時間も車内に閉じ込められたにも関わらず、
テレビなどの取材記者は現場に近づけず、
被害の実態や乗客の様子などを伝えることができなかった。

一方、乗車していたネットユーザーは、
車内外の状況を写真に撮り、ツイッターなどで発信。
安否確認や現場の状況をリアルタイムで周知することに役立った。

堀江さんは
「災害時、被害などを伝える写真や状況を説明する一言を、
位置情報を添えてSNSに投稿すれば、
有効な防災情報や支援のヒントになりうる」と強調。

有事の際だけでなく平時から、気軽に写真や文章を投稿することが、
「いざという時に役立つ」と登壇者は口をそろえた。

誰もが手軽に情報発信をできる時代になったその陰で、
膨大な未整理の情報は、誤解や混乱の元凶になりかねない。

そうした危機感から堀江さんは「無数の情報を集約し整理して、
有効な情報に変えていくシステムを構築することが、
より多くの人を助けることにつながる」と問題提起した。

 

取材担当
東北学院大3年 小林奈央(こばやし・なお)
立命館大2年 亀井文輝(かめい・ふみき)

 

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